読書 インプット道場

阪急電車 有川浩

2019年6月28日

阪急電車有川浩

まさかの”どローカル”

有川浩の小説で初めて読んだのがこの作品。

「ベタ甘」と評される恋愛描写の表現力で抜きんでた実力と人気を誇るライトノベル女流作家ですね。

「図書館戦争」シリーズや、ドラマ化で話題となった「フリーター、家を買う。」など、各方面から注目を浴びている有名作家です。

出会いは単純。仕事中に駅前の書店に時間調整でふらりと入ったところ、「阪急電車」というなんだかなじみ深い感じのする題名の本が、「映画化決定」の帯を締め、ズラリと平積みにされていたのです。

「なんと、あの阪急電車を題材とした作品が映画化とな」と手にとって、目次をひらいてさらに衝撃。そうでなくても関西圏、とりわけ大阪・京都・兵庫の人間にしかなじみのないローカル私鉄であるところの阪急電車の中でも、さらに一部の人にしかなじみのなさそうな「今津線」を題材として取り上げていました。

んなアホな。誰が読むの?

しかし、映画化決定の絢爛たる文字の並ぶ帯を見つめ、ふと「いや逆に考えるんだ、んな地元の人にしか興味を持たれないような題材を取り上げているのに映画化するぐらいなのだから、これはすごく面白いのかもしれない」とレジに持ち込んだのでした。

巧みな”往復”体験

この小説には電車にちなんだある仕掛けがあります。

目次を開くと、阪急今津線の駅名が宝塚から西宮北口までの8駅分。「そして、折り返し」の文言のあとに、今度は西宮北口から宝塚までの駅名が8駅分。トータル16のエピソードとなっています。

リアル路線では片道約14分。ミニ路線ともプチ路線とも言って失礼にはあたらないでしょう。

その短い駅と駅との間で、乗客それぞれが抱えている自分だけの物語が交錯していく。

人と人が触れ合う車内でおこる小さな小さな事件。その一つ一つの意味を探りに乗客の後ろから追いかけていくような掌編が集合をなして全体の小説を構成しています。

基本的には一駅一エピソードでありながら、視点を変えながら次のエピソードでも前のエピソードの続きを知ることができたり、また「折り返し」を効果的に利用した物語の進行など工夫があり、次々と訪れる乗客たちのエピソードの連鎖が楽しすぎて、ページをめくる手が止まらなくなります。

「ベタ甘」系の真骨頂

それぞれのエピソードの核となっているものは、いわゆる恋愛モノ。

人生のあらゆるステージにおける恋と愛について、女性ならではの視点で見事に描き分けています。

それをあれこれ色んなことと一緒に今津線に詰め込んだ、恋愛焼き菓子アソートという感じ。

一言でいえば、甘い。

長めに言えば「あま~~~い」です。

電車の中で読みながら、思わずにやにや口元がゆるみ、ちょっと自分の恋愛体験を思い出して恥ずかしくなっちゃうようなシーンも少なくありません。

控え目でかわいい”ソフトエロ”エピソードもほほえましく含まれており、さらににやけてしまう。

それでいて、全体としては爽やか。気分爽快すっきりしゃっきり、です。

ただし、その分読後感もとてもあっさり。まさに目的地に移動するために乗った電車のようです。

聖地巡礼

とにかく、とても読みやすい。

視点が変わるたびに感じる年齢別の文章構成の妙に、さすがと感銘をうけました。

特に小林駅のエピソードは秀逸で、悪魔に魂を売り渡した女性の乾燥し切った心に、徐々に潤いが染みていくあたり、ぐっと引きつけられるものがあります。

私はあまりにこの小林が気になったので、仕事のついでを利用して、小説で読んだ風景を確かめに小林駅に降りました。

そして、小説中に登場するあるものを見つけて、えらく感動してしまいました。

本を読んでいなかったらなんとも思わないはずの風景ですが、こうして小説と照らし合わせて初めて感じるものもあるんだなと、新ためて文学の面白さを発見しました。

わざわざ他府県から訪れてみるのも一興かもしれませんね。

 

\みんなに紹介してね/
この記事のタイトルとURLをコピーする
created by Takoyan

-読書, インプット道場
-

© 2020 ゴリアスの副業道場