読書 インプット道場

平面いぬ。 乙一

2019年7月18日

平面いぬ。 乙一

とても乙一的な4編

乙一の「平面いぬ。」を読んだので少しだけ感想。
テイストの違う4作品を楽しめました。4話とも、とても乙一的です。

『石ノ目』

ある土地に根付く怪談にまつわる物語。怪談を信じたり、疑ったり、もう1人の主人公である女性を疑ったり信じたり。ミステリアスなストーリー展開の果てに、主人公と読者をバッサリと裏切る真実。閉塞感が息苦しく、のめりこむような没入感は得られず。

『はじめ』

もっとも気に入っているストーリー。というより、もっとも気に入っている登場人物が”はじめ”。はじめとともに過ごした幾度もの冒険や事件や思い出が、私の中からまだ消えません。私は小学生の時から電車に乗って私立の学校に通っていたため幼なじみがいませんでした。幼なじみと過ごす悲喜こもごもがうらやましくもあり、切なくもあり。なんだか懐かしい恋心を刺激されて、ため息ばかりをついてしまいました。私は、はじめが好き。

『BULE』

これはよい。とてもいい。ファンタジーをファンタジーだとわりきって書いてる感じに、妙に共感。でもファンタジーっぽさの中にある人間味の、なんと深いこと。人間模様のなんとグロテスクなこと。ファンタジックな世界にリアルな事象をちりばめるあたり、作者の持つ毒を感じます。アルコール中毒の女性の最後が、ピストル自殺であったことに、現実の厳しさを見た気がしました。ただし、ブルーは幸せであったと私は感じます。同じ、もしくは上等の境遇にあるものの方が不幸せであった。環境や境遇や、持って生まれた個性によって、幸不幸が必ずしも左右されるものではない。その違いは、心根一つで決定される、ということではないでしょうか。

『平面いぬ。』

これは、重い。一気に読みきるには、ちょっと重過ぎて、ページをめくるのにためらいがありました。悲惨な境遇の中で、あえて能天気に生きようとするのは、もしかしたら誰もが持つ防衛的本能のなせる技なのかもしれません。私の父が癌で亡くなった時に、私の感情の変化起伏は論理的に説明できない状態であったし、傍目に見ると異常だったことでしょう。しかし、それは私の防衛本能が、自分の精神を楽な方へと導いていたのだろうと、今になって思います。そこからわざわざ自分を追い込んでしまうと、もう生きられなくなってしまうから。そんな人間のどうしようもない弱さと、かっこ悪いところを晒してでもそこから立ち上がって生きる強さ。その両面をこの作品に見られた気がしました。

 

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