魔法の言葉の秘密とは
昔、「解決!ナイナイアンサー」という番組ですこぶる評判のよかった相談員の一人、心屋仁之助の本です。
番組で「魔法の言葉」と取り扱われていた手法の一部が、この本にも記されています。
光と影の法則とはつまり、現実的に現在起こっているあなたのまわりにある問題は、非現実的なあなた被害者意識が引き起こしており、その根底には全く別の過去に置き忘れた問題に原因があるという、因果の法則のことです。
「私は悪くないのに」という、被害者ぶってすねた心を素直にし、自分の価値観で相手を図ること辞めた時、現在の問題は雲散霧消し、過去に許せなかった相手やその時の自分を許し、受け入れることで根本の原因が断ち切れる。自分が変わることで身の回りのすべてが変わっていくという。
なぜ自分の周りには問題だらけなのか
本書では面白い例えでその事が述べられています。
家の中で嫌な物をゴミとして家の外に出していくと、やがて家の中にはゴミがなくなるが、気づけば家の周りはゴミだらけ。そうなってから「私はいつも問題に囲まれている」と嘆いている。なんとも滑稽な姿です。
自分の中で許していない自分に対する感情、すなわち怒りを周りの人に当てはめて、嫌いだと思うことを見つけては心を閉じて締め出していくのです。
ある人から受ける印象は、実は人それぞれ。ある人は、頼れる雰囲気を見出し、またある人は怖そうな人だと感じたりする。それは自分のフィルターを通してみる世界は、自身が強く反応してしまうものをより鮮明に浮き上がらせるから。
だから嫌いだと捨てた部分をわざわざ相手に見出してしまう。自分を許せなかった過去の記憶が、そのゴミに対して許せないと反応するのです。
被害者ぶってすねていて周りの人を嫌っていけば、その人は誰からの助けも借りられずに、必ずどこかでつまづく。つまづいて「やっぱり私は認められてない」「私は悪くないのに誰も助けてくれない」と自分の感情を正当化しようと努力しはじめる。
これが悪循環となり、なぜかいつも私の周りには問題だらけで、どこにいっても必ず嫌な人がいる、という迷信めいた現象が起こるのです。
問題解決のステップ
問題解決にはいくつかのステップが必要となります。
まずは自分が何に反応してすねているのかを見つけ出すということ。
実際に起こっている嫌なこと、目にしたくなかった嫌なことを書き出してみるとよくわかるといいます。
そしてそれに対して、要するに何が気になるのか、どこに腹が立つのかを明確にして言語化する。
どういうことに対して何を言いたいのかを自分で把握するのです。
次に、その言葉は一体いつから言いたかったのか、または言えなかったのか、その状況や出来事を過去から探しだします。
心屋がナイナイアンサーで見せていた「魔法の言葉」とは、相手の話から現在の問題の遠因となっている過去の出来事を推測し、その時に言えなかったであろう言葉を探り当て、ズバリ言わせてみせるというスゴ技なのです。
問題解決のためのステップを多くの人に体験させているうちに、相手に聞かずとも何に腹を立て何に悲しい思いをし、そのことについて誰に何を言えなかったのかがわかってしまうようになったのです。恐ろしい。
心を知ることは脚本の礎
実は、私はこの本のおかげで何かを解決できた、という体験はできなかったのですが、それでも一つの真理を知りえるきっかけとなったかもしれないと思っています。
それは目の前に起こっている問題を誰かのせいにしているうちは結局同じ問題に悩ませられ続け、絶対に解決しないという簡単な法則です。
原因と結果の真ん中に常に今の自分がはさまれていることを意識することは、意外と大事なことかもしれない。それが被害者意識からすねてしまった心が素直さをとりもどすことにつながるからです。
こうやって人の心について理解を広げることは、脚本に間違いなく影響するでしょう。脚本に書くべきことは、どう転んでも人の心だからです(人外を書くといっても、結局人と同じ部分を見つけて書く)。人がどうやって人のことを嫌うか、なぜ許せないか、どうやったら和解できるか。そのヒントがあるように思いました。
この本を読んでますます心屋仁之助を「本物」と感じるようになりました。この心屋仁之助について知りたいと思ったとき、この本が入門の一書となることを確信いたします。