天才「片山まさゆき」の代表作
麻雀が好きです。
私の麻雀に対する思い入れを強めているものの一つに、「片山まさゆき」の存在があります。
この漫画家の麻雀作品は、ギャグあり、オカルトあり、ファンタジーありの、本格麻雀とは少し趣の違う世界が多いのですが、なんだか「麻雀の面白さの本質」を絶妙についているような表現のうまさがあるのです。
仲間内でワイワイ卓を囲む楽しさ、役作りの面白さ、微差の勝負の駆け引き、精神の強弱から分かれる結果の非情さ、そして強敵の存在……。
私が片山まさゆき作品の中でもイチオシにしているのが、ノーマーク爆牌党です。
ノーマーク爆牌党の”ドラマ性”
この作品は片山作品の中でも随一のシリアス系麻雀マンガと言えるでしょう。
ノーマーク爆牌党の素晴らしいところは、ドラマの骨組みがしっかりしているところです。
高度な麻雀戦略のやり取りをベースに、爆岡というプロ麻雀界の賞金を独り占めしてしまうようなスーパースターの不可思議な「強さ」の秘密を巡るミステリが展開されています。
勉強熱心な努力家も天下を狙う野心家も豪運の者も、皆が爆岡を倒そうと挑戦するものの、その圧倒的な強さの前に全てのタイトルが何年にもわたって爆岡に支配されてしまいます。
そこでもう一人の主人公であるプロ雀士の鉄壁君は、ある時その強さの秘密を掴みます。
しかし、実はそこでドラマは終わらない。
強力無比なその強さを超える技と心の強さを身につけなければ爆岡には勝てないからです。
果たして、鉄壁の往年の努力は報われるのか。
プロの世界を描く”超本格派”
とにかく物語りは巻を進めるごとにドラマチックになっていき、爆岡の秘密が暴かれる時、そのボルテージは最高潮に達します。
そしてストーリーを下支えしている麻雀に関するウンチクはズバリ、マニアック。
舞台がプロの世界だけに、その真剣勝負の駆け引きは、並みの劇画系の作品のそれを遥かに凌駕していると思われます。
実際のところ、これが片山まさゆきの真骨頂なのだと思いました。
ここまでの本格的な闘牌は、普通描きたくても、描く場がないのかもしれません。
そのほとんどが並以下の打ち手である「普通の読者」など置き去りにしてでも、書き上げたい世界がここにある。そのような強引な熱意さえ伝わってくるのです。
リアルとファンタジー
緻密に練り上げられた牌模様を「リアル」とすれば、爆岡はその存在そのものが巨大な「ファンタジー」です。
だがしかし、決して「こんな甘ったれたファンタジーはすでに麻雀とは呼べない」などと言ってはいけません。
リアルな本格麻雀の世界にファンタジーが紛れ込んだときにこそ起こる「ドラマ」「人間模様」。まさにこの作品の真の魅力はそこにあるのですから。
麻雀のルールくらいは知っている人だと、挫折する可能性がありますので、麻雀に詳しい人限定ですが、超おすすめ作品です。