読書 インプット道場

天帝妖狐 乙一

2019年7月6日

天帝妖狐 乙一

”黒乙一”と”白乙一”の共存

「天帝妖狐」を読みました。

夏と花火と私の死体」のデビュー後すぐの2作目ということですが、ここにきていよいよ乙一の本領が発揮され始めている感じがしました。

天帝妖狐は、とにかく真っ黒で、しかしその黒一色のなかにすでに”白乙一”が内包されているようで、激しく切ない。

構成があまりに巧みで、読み終えてすぐに冒頭から読み直して思わずうなり声を上げてしまいました。

しかも電車の中で。

ストーリーテリングの妙

ストーリーを私なりに分析して、絵画を鑑賞するときに鼻先ほどに間近で見た後で遠くから眺めるように作品全体を見渡した時、作者のストーリーテリングのあまりの上手さに舌を巻いてしまいました。

緊迫のシーンへの時間軸の絞りこみと卓越した人物描写により、主人公の葛藤、対立の心理が痛いほど伝わってきます。

人間としての自分と、非人間としての自分の乖離が肉体面と精神面と両方に訪れてくる緊張感。

心から渇望しているものを手に入れてはいけないという自縄自縛の絶望感。

生きていれば誰しもが経験するであろう“自らに科したせつない贖罪”が私の胸の奥にもうっすらと蘇り、押しつぶされるような暗い気持ちになりました。

いろんな感情がざわつく

これは、もしかしたら失恋の感情だったかもしれない。

住む世界の違う、しかし一度は分かり合えたものが、やはり自然の摂理に逆らえずに永遠に引き裂かれてしまう。私の場合は過去の失恋だったかもしれない。

いや、それだけじゃない。いろんな事が私の胸には渦巻いていました。

他人と違うってことが怖かった事。人と同じじゃなくてもいいやと開き直った事。自分が他人とは違う「自分」であることに気づかされ、傷ついた事。それを誇らしく思えるようになった事。でも分かり合えなくて泣いた事。他人を傷つけて自分を守った事。そんな「自分」な存在を認めることで、他人を尊重できるようになった事。

そういう感情を読む人の心に湧き出させずにはおかない物語でした。

でも、これってホラーの領域じゃないよね。やっぱり。

 

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