タイトル:とある僧侶が魔王の使いで勇者の仲間になりたがる冒険
男1 女1 不問1 15分
ファンタジー 冒険
女🟠アンジュ(23)とある僧侶
男🟢マサージ(20)伝説の中でも最強の勇者
不問🔴サンショー(??)魔王
シーン0
🟠アンジュ 「主人より、この冒険を記録する命令を受けて、私アンジュが筆記するなり」
シーン1
魔王が統べる地サッド
🟠アンジュ「魔王様がお呼びだなんて怖い。弟のことじゃなきゃ良いけど」
🔴サンショ「遅い、アンジュ待っていたのだ」
🟠アンジュ「サンショー様、申し訳ございません。急なお呼びたてで慌てまして」
🔴サンショ「急な要件なのだ」
🟠アンジュ「もしかして、弟の身に何かあったんですか?」
🔴サンショ「実は、そうなのだ。お前の弟、ズシオーは勇者に傷つけられて瀕死なのだ」
🟠アンジュ「なんですって!サンショー様、弟は、ズシオーは大丈夫なのですか?」
🔴サンショ「もちろんなのだ。魔王軍直属の医師たちに治療に当たらせている」
🟠アンジュ「サンショー様が、弟を勇者から守ってくれると聞いて、こちらにきましたのに」
🔴サンショ「勇者はとんでもなく油断できない相手なのだ」
🟠アンジュ「勇者にとって弟のズシオーは、絶対に排除しなきゃいけない存在だとか」
🔴サンショ「その通りなのだ。あらゆる伝説の中でも最も憎むべき勇者なのだ」
🟠アンジュ「悪い奴なんですね」
🔴サンショ「だが、やつはまだバーフェクトではないのだ」
🟠アンジュ「パーフェクトとは?」
🔴サンショ「奴にはどうしても手に入れないといけないものがあるのだ」
🟠アンジュ「それは、一体?」
🔴サンショ「それを調べていたズシオーが勇者から酷い目に合わされたのだ」
🟠アンジュ「許せない!その勇者を、私の手で倒させてください」
🔴サンショ「そうなのだ。アンジュ、お前を奴の元に送ろうと思っていたのだ」
🟠アンジュ「でも、私は僧侶。勇者の相手などできますでしょうか」
🔴サンショ「そこで、お前は奴の仲間になったふりをするのだ」
🟠アンジュ「ふり?」
🔴サンショ「そうなのだ。僧侶が仲間になれば無茶もする。回復して欲しい場面がくるのだ」
🟠アンジュ「そうか、そこで奴を仕留める。それなら私にもできます。場所は?」
🔴サンショ「冒険者の地オーウなのだ」
🟠アンジュ「わかりました。どうぞご命令ください!」
🔴サンショ「命令は契約なのだ。お前の魂は我のものになるのだ」
🟠アンジュ「無論、承知しております」
🔴サンショ「命令するのだ。サンショーの名の下にアンジュを勇者の配下に派遣するのだ」
🟠アンジュ「はい。行ってまいります!冒険者の地オーウへ」
🔴サンショ「ズシオーが待っているのだ。勇者を倒してサッドの地に再びくるのだ」
シーン2
冒険者の地オーウ
🟠アンジュ 「わっあそこにいるのが勇者だ!ホントにとんでもないオーラを放ってるわね」
🟢マサージ 「お、女だ。どうした一人か」
🟠アンジュ 「何を!」
🟢マサージ 「冒険者の地オーウは、ケッコー危ねーから独り歩きしねーほうがいっぞ」
🟠アンジュ 「おのれ、勇者!」
🟢マサージ 「ん?どした?女」
🟠アンジュ 「私は、アンジュだ!女と呼ぶな」
🟢マサージ 「あ、そっか。オラ、マサージ。よろしくな、アンジュ姉ちゃん」
🟠アンジュ 「おのれ、マサージ!じゃ、なかった。あの、その、勇者さまーん」
🟢マサージ 「なんだ?急に。気持ちわりーぞ、おめえ。でもなオラにはわかるぞ」
🟠アンジュ 「ええ?何がバレたの?」
🟢マサージ 「おめえ、悪い奴じゃないだろ」
🟠アンジュ 「あ、あああ」
🟢マサージ 「おら、頭はわりーけど、人を見る目だけは確かなんだ」
🟠アンジュ 「お前、本当にばかだろ。じゃなかった。あの、仲間にしてくださーい」
🟢マサージ 「仲間?いや、わりーけど、おら、決められた仲間、バディがいてよ」
🟠アンジュ 「決められた仲間。き、聞いてない!」
🟢マサージ 「へ?聞いてないも何も、今初めて会ったとこじゃねーか」
🟠アンジュ 「いや、それはその。こっちの話。で、バディって?」
🟢マサージ 「どうもよ。おらの力を最大限に出すには特定の血筋の仲間が必要なんだ」
🟠アンジュ 「そ、そうだったのね。じゃ、私じゃ無理なのか」
🟢マサージ 「いや、待て。おねーちゃん。もしかして僧侶じゃない?」
🟠アンジュ 「はい。私、まだまだ非力ですが、僧侶です」
🟢マサージ 「まだまだ非力って。お姉ちゃん、おらより年上じゃん」
🟠アンジュ 「もーほっといてよ」
🟢マサージ 「おら、サッドってゆー、魔王の総べる地に向かってんだけどさ」
🟠アンジュ 「ええ、知っています。この冒険者の地オーウの向こう側」
🟢マサージ 「おら、剣は誰にも負けねーんだけど、魔法がいまいちでさ」
🟠アンジュ 「ですよね!ですよね!」
🟢マサージ 「特に回復魔法はめっちゃ必要なんだけど、助けてくんねーかな」
🟠アンジュ 「もちろんでございますとも!しめしめ」
🟢マサージ 「ん?今、しめしめって言った?」
🟠アンジュ 「いえいえ、こちらの話でございます!」
🟢マサージ 「あーよかった。おら、魔法下手だから道具袋頼みだからさ」
🟠アンジュ 「本当だ、道具袋がパンパンだわ」
🟢マサージ 「じゃ、よろしくな。アンジュ姉ちゃん」
🟠アンジュ 「はい、喜んでー」
シーン3
サッドに向かって移動中である
🟠アンジュ 「ところで、勇者。じゃなかった、マサージさま」
🟢マサージ 「あんだ?マサージさまとか、やめてくれよ。マサージって呼んでくれ」
🟠アンジュ 「わかりました。マサージ。さっき言ってたバディってなんなんですか?」
🟢マサージ 「おらもよくわかんねーんだけどさ、どうもおらにはバディが必要らしい」
🟠アンジュ 「どんなお人なんですか?」
🟢マサージ 「賢者だ。この地にそれほど数はいない。おら、だから賢者を探していた」
🟠アンジュ 「探していた?」
🟢マサージ 「目星はついたんだが、いなくなってしまったんだ」
🟠アンジュ 「そう、なのか」
🟢マサージ 「でも、おらには、今アンジュがいる。心強いよ」
🟠アンジュ 「困ったことになったら、ぜひ私の回復魔法に期待してくださいね。ふふふ」
🟢マサージ 「ああ、期待してっぞ。って、危ない!」
🟠アンジュ 「きゃあ」
🟢マサージ 「大丈夫か?アイツだ。完全におめえを狙ってたぞ」
🟠アンジュ 「あ、あれは。魔王軍直属のガーゴイル。なぜ私を」
🟢マサージ 「アンジュ、下がってろ。奴らの狙いはおめえのようだ」
🟠アンジュ 「そんな」
🟢マサージ 「おらにまかせとけ。魔王軍直属だろうが、おらの剣さえ届けば」
🟠アンジュ 「届いてない。ガーゴイルは空飛ぶ魔族。危険よ、マサージ」
🟢マサージ 「おめえを狙っている以上、奴らは絶対に地上に降りてくる」
🟠アンジュ 「あ、意外と頭使ってるのね。じゃなかった。助けてー」
🟢マサージ 「いまだ!おらをなめるなよ。こう見えても最強の勇者だぜ」
🟠アンジュ 「つ、強い。これほどとは。サンショー様ですら、危うい」
🟢マサージ 「さ、とっとといこーぜ」
🟠アンジュ 「あ、マサージ。けが、してるわ」
🟢マサージ 「おう。最初の不意打ちの時にな。ちょっとミスっちまった」
🟠アンジュ 「ダメよ。手当しないと」
🟢マサージ 「こんなもんてーしたことねーよ」
🟠アンジュ 「なんのための僧侶ですか。なんのための回復魔法ですか」
🟢マサージ 「こんなかすり傷で、魔法なんか使わせられるかよ」
🟠アンジュ 「う、ううう」
シーン4
日が暮れて野営
🟢マサージ 「はぁ、はぁ」
🟠アンジュ 「どうしたの?マサージ。急にここでテントをはるって言ってから様子が」
🟢マサージ 「はあ、はあ。どうやら、あのガーゴイル、爪に毒を持ってたらしい」
🟠アンジュ 「これは、猛毒。私の魔法じゃ、どうにもならない」
🟢マサージ 「そ、そういうことか」
🟠アンジュ 「ほら、言ったこっちゃない。ダメよ病院に行きましょう」
🟢マサージ 「む、無理だよ。今は動けない」
🟠アンジュ 「そんなこと言ったって、私あなたを担いで病院なんて」
🟢マサージ 「行かなくていいだろ?」
🟠アンジュ 「え?どうして?」
🟢マサージ 「おめえ、魔物の匂いがする。ガーゴイルを魔王直属と言い切った」
🟠アンジュ 「そ、それは」
🟢マサージ 「最初から、これが目的だったんだろ。だからガーゴイルの」
🟠アンジュ 「違う!そんなんじゃない。そんな卑怯な」
🟢マサージ 「卑怯じゃない?本当に?」
🟠アンジュ 「うるさい!」
🟢マサージ 「このままおらを殺せば、おめえにかけられた命令は解けるんじゃないか」
🟠アンジュ 「命令は契約よ。私の魂は、もう魔王のもの」
🟢マサージ 「殺せ」
🟠アンジュ 「ころ、せない」
🟢マサージ 「なぜ、おめえがおらのことを憎んでるのかはわからねえ、だが」
🟠アンジュ 「うるさい」
🟢マサージ 「おらは誰かに恨まれる覚えは一切ない。それだけは自信あるぜ」
🟠アンジュ 「わかった。本当のことを言う」
🟢マサージ 「うん?」
🟠アンジュ 「私は魔王サンショー様の命令でお前の仲間になろうとした」
🟢マサージ 「やっぱりね」
🟠アンジュ 「お前は私のことを悪い奴じゃないと言ったが、お前も悪い奴には思えない」
🟢マサージ 「それはどうも。だが、お前のその命令と契約。解く方法はないのか」
🟠アンジュ 「契約を解くことはできないが、上書きすることはできる」
🟢マサージ 「どうやって?」
🟠アンジュ 「途方も無い無理難題だ。絶対に叶えることはできない」
🟢マサージ 「だったら、今がチャンスだろ。おらを倒せばいい」
🟠アンジュ 「寝首をかくようなことはしない。私と勝負しろ!」
🟢マサージ 「勝負だと?おら、強いぜ」
🟠アンジュ 「わかってる。だが、私もどうしたら良いのかわからなくなってるんだ」
🟢マサージ 「わかった。じゃ、左手だけで勝負してやる」
🟠アンジュ 「なんだと!」
🟢マサージ 「おらが負けたら好きにしていい。だがおらが勝ったら」
🟠アンジュ 「勝ったら?」
🟢マサージ 「おらのバディになれ」
🟠アンジュ 「ふざけるな!お前は、弟の敵だ。絶対にゆるせない!」
🟢マサージ 「これだけは言っておく。おらは、アンジュの弟ズシオーと会ったことがない」
🟠アンジュ 「な、何を!どうして弟の名を!」
🟢マサージ 「お前の弟ズシオーは、賢者だろ。この地の賢者といえばズシオーだ」
🟠アンジュ 「と、言うことは」
🟢マサージ 「ズシオーはおらの定められたバディ」
🟠アンジュ 「つまり、マサージがズシオーと戦うはずがなかったのか」
🟢マサージ 「さて、誰がおらのバディを痛めつけたんだろうね」
🟠アンジュ 「魔王サンショー!全てはアイツの手のひらの上だったのか!」
🟢マサージ 「じゃ、気を取り直して、出発しようか」
🟠アンジュ 「あれ?マサージ。あなた、猛毒は?」
🟢マサージ 「だから言ったろ。こんな時のためにおらの道具袋はパンパンだって」
🟠アンジュ 「じゃ、私を試したの?」
🟢マサージ 「そうじゃない。真実を知りたかったんだ。アンジュと一緒に」
🟠アンジュ 「でも、勇者をパーフェクトにするバディが」
🟢マサージ 「それが、さ。おら気づいちゃったんだよね」
🟠アンジュ 「何?まだ何かあんの?」
🟢マサージ 「もう大人の年齢なのになぜ、アンジュが僧侶として未熟か?」
🟠アンジュ 「え?ええ?」
🟢マサージ 「それは、アンジュも賢者だったから。間違いねーな」
🟠アンジュ 「じゃ、もしかして」
🟢マサージ 「そ、おらのバディは、ズシオーの姉ちゃん。アンジュだったんだ」
シーン5
魔王が統べる地サッド
🔴サンショ「ワハハハなのだ。ずいぶん遅かったが、勇者を連れてくるとは、でかしたのだ」
🟢マサージ「魔王サンショー。ようやく会えたな」
🟠アンジュ「サンショー!私の弟に何をした!」
🔴サンショ「何もしてないのだ。雑巾みたいに、ちょっとひねってやっただけなのだ」
🟠アンジュ「ぞ、雑巾だと!」
🔴サンショ「なぜだバディは壊したはずなのに」
🟢マサージ「壊した!ズシオーのことかー!」
🔴サンショ「こ、これがパーフェクト状態なのだ。間違いないのだ」
🟢マサージ「おらは怒ったぞー!」
🔴サンショ「うわー、なのだー!」
シーン6
冒険者の地オーウ
🟠アンジュ 「いやあ、あの時のマサージったら、めっちゃ怒ってたもんね」
🟢マサージ 「おらも、自分で怒りがコントロールできなくなっちゃったんだ」
🟠アンジュ 「でも、これでお別れね」
🟢マサージ 「そうか。魔王の命令を受けた身。サッドに戻るのか」
🟠アンジュ 「マサージ。本当は、一つだけ。一つだけ方法があるの」
🟢マサージ 「どんな方法だい?」
🟠アンジュ 「魔王サンショーの命令を上書きする方法」
🟢マサージ 「どうか教えてくれ」
🟠アンジュ 「それは婚姻という契約」
🟢マサージ 「そっか。婚姻かー」
🟠アンジュ 「だ、だめですか?勇者さま」
🟢マサージ 「簡単なこった。じゃ、結婚すっか」
🟠アンジュ 「んだ」
終わり