声劇 2人

とある研究(男1女1:5分)

タイトル:とある研究

男1 女1 5分

SF

 

🟢男「で、なんで俺はこんなところにいるんだ?」

🟠女「もぅお目覚めですか。ずいぶんとお早い」

🟢男「だから、俺はなんでここにいるんだと聞いてる」

🟠女「はい。そうですね。たらふくお食事をされてらしたのは?」

🟢男「覚えてる。そして部屋に帰ったつもりだった」

🟠女「気がついたここにいたと」

🟢男「その通りだ。それにそっちに女がいるよな」

🟠女「はい」

🟢男「女はまだ寝ているようだが、大丈夫なのか?」

🟠女「もちろんです。むしろ、あなたが起きたことの方が心配です」

🟢男「起きた方が心配とは、変なことを言う」

🟠女「もぅしばらく寝ていただく予定でしたので」

🟢男「俺が起きると困ることでもあるのか?」

🟠女「困るほどではありません。少しの暇つぶしができた程度のこと」

🟢男「ただの暇つぶしだと。いい加減にしろ」

🟠女「そんな大きな声を出して大丈夫ですか?頭は痛くありませんか?」

🟢男「俺の心配をするなら、俺を部屋に帰らせてくれ。なんなら彼女も一緒に連れてくぞ」

🟠女「できません。ただ、あなたとあの女性の悪いようにはしませんから」

🟢男「あの女、風邪引かないといいけど」

🟠女「大丈夫です。健康管理に抜かりはありません」

🟢男「健康管理だ?ますます意味がわからん」

🟠女「私たちは、ある生物に興味があるんです」

🟢男「はい?」

🟠女「その生物のことが知りたい」

🟢男「それが俺や女がここにいることと、なんの関係があるんだ。ここはどこなんだ?」

🟠女「ここは、私たちの船です」

🟢男「船?と言っても、ここ、海の上じゃないよな」

🟠女「もちろんです。宇宙船と言った方がわかりやすいですね」

🟢男「全然わからない。なぜ俺たちはここにいるんだ」

🟠女「説明します」

🟢男「いや、もー説明はいい。俺は部屋に帰りたい」

🟠女「ごめんなさい。あなたを今帰すことはできません」

🟢男「じゃ、なんで俺がここにいるか、理解できるように説明しろ」

🟠女「私たちは何年にもわたって地球の研究をしている星のものです」

🟢男「何年にもわたって?」

🟠女「正確には何十年です」

🟢男「宇宙人がずっと地球を研究しているだと?」

🟠女「その通りです。私たちの星だけではありません。地球は宇宙にとって観察の対象なんです」

🟢男「観察ね。いつか襲いかかるつもりなのか?」

🟠女「とんでもありません。例えば、地球でも絶滅危惧種を保護するでしょう。それと同じ感覚なんです」

🟢男「なるほどね。地球を見てて、面白いかい」

🟠女「そうですね。面白いとは少し違いますが、何よりも私たちは牛に注目しています」

🟢男「牛なのか。さっきもそんなことを言ってたな。なぜ牛なんだ?」

🟠女「あなたはどう思いますか。地球を汚すことなく、しかも人間にその全てを提供できる存在」

🟢男「確かに、それが牛の本質だ。肉はうまいし、乳も飲める、皮は立派で、骨もじょうぶだ」

🟠女「私たちの星にはそのような生物が存在しておらず、牛のような存在を作り出せないかと研究しているんです」

🟢男「宇宙人が何十年も研究して、その程度のことが実現できないのかい」

🟠女「残念ながら。ただわかっていることは、牛は他の生物と違って、外の世界から地球に来たということ」

🟢男「なんだって?」

🟠女「やはり地球では知られていないのですね」

🟢男「初めて聞いたよ」

🟠女「過激な星が行った調査で、牛の血を抜き取ったりもしたんですが、地球外生物で間違いないとのことです」

🟢男「うーん。ちょっとショックだな」

🟠女「やっぱり、ショックですか」

🟢男「まあね、それなりに」

🟠女「実は、私たちの星で食料問題が起こっていて、牛の大量生産を急ぐ必要が出てきたんです」

🟢男「大量生産ね。言い方は気持ち悪いが、よくわかる。人間たちもそうしてきたからな」

🟠女「かといって観察対象の地球から、大量に牛を取り上げることは、さすがにできません」

🟢男「じゃ、どうするんだ?」

🟠女「アダムとイブ計画」

🟢男「なんだそれは?」

🟠女「もしかしたらご存知ないかもしれませんが、最初のオスとメスが始祖となって大量に子孫を増やす計画です」

🟢男「なるほどな」

🟠女「私たちは何十年も前から牛の生態を研究し、牛と直接コンタクトを取ることができるようになりました」

🟢男「うん、そうか。そうだな」

🟠女「しかし、地球外生命体の牛をコピーすることはできなかった」

🟢男「だから?」

🟠女「そう、だから、健康で優秀な種である、あなたとあちらの女性を選んで、私たちの船に招待したのです」

🟢男「つまり、俺は、そこの女とつがいになって、お前たちの星で繁殖するというのか」

🟠女「悪いようにはしません。なぜなら、あなたたちの健康と、繁栄のために私たちは全力を尽くすからです」

🟢男「美味しい干し草も、食べ放題なのか」

🟠女「もちろん、最高の配合で提供いたします」

🟢男「ちょっと、気になるんだが、あちらの女は、その、大丈夫なのか?」

🟠女「大丈夫、と申しますと?」

🟢男「その、俺で、いいのかな?」

🟠女「ご安心ください。お二人の記憶はここで消します」

🟢男「え?」

🟠女「なので、ちょっと早いお目覚めでしたが、もう一度お眠りください」

🟢男「そうなの?じゃなんで俺にこんな説明を」

🟠女「だから最初から言ってたじゃありませんか。ただの暇つぶしですって」

🟢男「確かに」

🟠女「次に会う時は、彼女と二人っきりですよ」

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