タイトル:猫耳メイド喫茶のみほ
男1 女1 15分
ファンタジー ラブコメ
男🟢まさと(26)彼女に振られて傷心中の男性
女🟠みほ(22)猫耳メイド喫茶のウェイトレス
🟢まさと 「あれここどこだっけ?暑い中、ふらふらとして川を見ていたような」
🟠みほ 「にゃー。お帰りなさいませご主人様」
🟢まさと 「なんだここは?メイド喫茶なのか?」
🟠みほ 「あら、ビショビショじゃないですか。冷房寒いかしら」
🟢まさと 「いや、大丈夫だけど」
🟠みほ 「はい、お茶ですにゃー」
🟢まさと 「おい、なんでこのメイド喫茶では、こんな猛暑日に熱いお茶を出すんだよ!」
🟠みほ 「お水がよかったんですか?ならそう言ってもらわないと」
🟢まさと 「誰が炎天下で汗だくになってるのに熱いお茶を欲しがるんだ」
🟠みほ 「ごめんなさい。ワタクシ聞こえてるんで、もう少し小さいお声でお話しください」
🟢まさと 「おお、耳がピクピクしてる」
🟠みほ 「ご主人様は猫耳、お好きですよね。触っても良いですよ。ちょっとだけなら」
🟢まさと 「もう、いいよ。出てく」
🟠みほ 「え?ワタクシ、おしぼりとお茶をお出ししたのに、帰られるんですか?」
🟢まさと 「ああ、そうだけど」
🟠みほ 「私の、私の何がそんなに悪いんですか!にゃー」
🟢まさと 「あの、そうじゃないんだけどさ」
🟠みほ 「ワタクシが、可愛いからですか?」
🟢まさと 「へ?いや、違うけど」
🟠みほ 「やっぱりそうなんだ。ワタクシが可愛すぎるからこうなるんですね。ワタクシが悪いんです」
🟢まさと 「いや、あのさ、そういうことじゃなくてね」
🟠みほ 「何が。何が望みなんですか?私にどんなことしようと思ってるんですか?」
🟢まさと 「わかったわかった。俺の負け。だからアイスコーヒーと水持ってきて」
🟠みほ 「はい。ご注文、ありがとうございまーす」
🟢まさと 「まーすっていうのやめろよ」
🟠みほ 「はい?追加のご注文ですかにゃ?
🟢まさと 「違うよ!もういいよ」
🟠みほ 「ありがとうございまーす」
🟢まさと 「うるせーな。あー、なんなんだこの店。俺しか客いねーじゃねーか。そりゃ訳ありだよね」
🟠みほ 「ご主人様ー。どうかなさいましたか?一人でペラペラと」
🟢まさと 「ほっとけよ。こっちの勝手だろ」
🟠みほ 「お独り言好きですもんね。やっぱり炎天下のせいかしら。ご主人様が変なのは」
🟢まさと 「変なのは、お前の方だよ」
🟠みほ 「あら、お前だなんて、急に彼氏気取りですか?」
🟢まさと 「なんでそうなるんだよ」
🟠みほ 「ワタクシ、お前呼ばわりなんて、特別なご主人様ぐらいなもので。ああ、ワタクシの初めて、もらわれてしまいましたのね」
🟢まさと 「いやいや。もののはずみだから。別に、彼氏気取りでもなんでもないから、許してよ」
🟠みほ 「それじゃ、アイスコーヒーのお供に、チーズケーキはいかが?」
🟢まさと 「わかったよ。オーダーするよ」
🟠みほ 「はいご主人様。ご注文、ありがとうございまーす」
🟢まさと 「だから、まーすって言うな。まーすって」
🟠みほ 「ところで、ご主人様?」
🟢まさと 「なんだよ。もう注文はしねーぞ」
🟠みほ 「ご主人様がお持ちのその大事そうな封筒はなんですか?」
🟢まさと 「いや、これは、ちょっと」
🟠みほ 「え?え?」
🟢まさと 「何?何?」
🟠みほ 「もしかして!ワタクシのためのプレゼント!」
🟢まさと 「なわけねーだろ」
🟠みほ 「そうやって隠すあたり、図星、ですね」
🟢まさと 「違うわい。お前に取られてたまるかっ」
🟠みほ 「あらやだ。またワタクシのことをお前って。完全に彼氏気取りなんですね」
🟢まさと 「なんでそうなるんだよ。これは、彼女にあげるはずだったプレゼントだよ」
🟠みほ 「あげるはずだった?」
🟢まさと 「今日、二人の初デートでさ。犬の銅像の前で待ち合わせしてたんだけど」
🟠みほ 「犬の、銅像?」
🟢まさと 「その犬の銅像が溶けるほどの暑さだったんだけど、ちょっと遅刻しちゃって」
🟠みほ 「ちょっとって?」
🟢まさと 「30分、程度、かな?」
🟠みほ 「炎天下で30分、犬の銅像の前で待たせたんですか?」
🟢まさと 「いや、さすがに悪いと思ってソフトクリームを近くのお店で買ったんだけど」
🟠みほ 「うんうん」
🟢まさと 「犬の銅像がみえたから、遠くから声をかけたら彼女嬉しそうに振り向いて」
🟠みほ 「ほうほう」
🟢まさと 「そしたら、思わずつまづいて」
🟠みほ 「え?もしかして?」
🟢まさと 「彼女の服にソフトクリームがベッタリ」
🟠みほ 「今ドキ、ギャグ漫画でもあり得ない状況ですね」
🟢まさと 「プレゼント、渡そうと思ったんだけど、怒って帰っちゃった」
🟠みほ 「まあ、そりゃそうなりますね」
🟢まさと 「大事なプレゼントだったんだけど、フラれちゃったかなぁ」
🟠みほ 「悲しいお話し」
🟢まさと 「だろ、だからこれ以上俺の傷をえぐらないでくれよ」
🟠みほ 「でも、このプレゼント渡せてたら、もしかしたらって思います?」
🟢まさと 「そうだね。じゃあさ、見てもらってもいい?プレゼント」
🟠みほ 「ワタクシでよければ、拝見いたします」
🟢まさと 「はい。ジャーン」
🟠みほ 「えええええ」
🟢まさと 「ね、良いだろ。俺たちの初デートの記念」
🟠みほ 「もしかして、これを渡す気だったんですか?」
🟢まさと 「そうだよ」
🟠みほ 「渡さなくてよかったですね」
🟢まさと 「なんで?」
🟠みほ 「だって、これ、どう見たって婚姻届じゃないですか!」
🟢まさと 「うんそうだよ。俺の印鑑もついてある」
🟠みほ 「最悪。初デートにこんなのもらったら、ワタクシじゃなくても逃げますわ」
🟢まさと 「あれ?そうなの?」
🟠みほ 「なぜ、こんなことを」
🟢まさと 「彼女、家族がいなくて。ずっと一人だったんだ」
🟠みほ 「ご両親は?」
🟢まさと 「早くに亡くしてて、引き取ってくれたお爺ちゃんとお婆ちゃんも最近、亡くなってしまったんだよ」
🟠みほ 「そうだったんですね」
🟢まさと 「俺、亡くなったお婆ちゃんと、介護の仕事で関わっててさ」
🟠みほ 「ご主人様は今は、介護のお仕事をされてるんですね」
🟢まさと 「で、彼女とも何度もあってて、お婆ちゃんに託されてたんだ、彼女のこと」
🟠みほ 「それで、彼女を安心させるために」
🟢まさと 「僕には彼女と生涯をかけて関わる覚悟がある。それを証明したかったんだ」
🟠みほ 「シクシク」
🟢まさと 「え?泣いてるの?」
🟠みほ 「だって、健気で、お可哀想で」
🟢まさと 「いや、ちょっとカッコつけたけど、普通に彼女のこと、好きだったし」
🟠みほ 「違います。ご主人じゃなくて彼女が、可哀想」
🟢まさと 「へ?」
🟠みほ 「身寄りがなくて、世話になってたお婆ちゃんに、無理やり介護士を押し付けられて、いやいやデートに行ったところ、猛暑日の中で30分待たされ、挙げ句の果てに、ソフトクリームをベッタリ。ワタクシなら、綺麗さっぱり自害しています」
🟢まさと 「おいおい。物騒なことを言うなよ」
🟠みほ 「それに」
🟢まさと 「それに?」
🟠みほ 「初デートから、こんなものを渡されて、結婚をちらつかせるだなんて、見下げ果てた男ですね」
🟢まさと 「何も、そこまで言うことないだろう」
🟠みほ 「お諦めください」
🟢まさと 「うう。そう、なのか」
🟠みほ 「そのかわり」
🟢まさと 「そのかわり?」
🟠みほ 「これは、ワタクシにくださいね」
🟢まさと 「はい?それ、婚姻届なんだけど」
🟠みほ 「ワタクシ、身寄りがないんです。長年ここにいててもご主人様以外、誰も来ないし、一人じゃ寂しくて生きていけないんですよー」
🟢まさと 「あのさ?俺、今フラれたばかりなんだけど。傷心よ。ブレイクハートよ。なんでお前、おっと、お前じゃなくて、君に、彼女へのプレゼントを渡さなきゃいけないんだよ」
🟠みほ 「あなた、本当に、本当に、私のこと、ただのウェイトレスだと思ってます?」
🟢まさと 「え?違うの?」
🟠みほ 「あなたになぜ熱いお茶を出したかわかります?」
🟢まさと 「え?嫌がらせじゃないの?」
🟠みほ 「あなたが、あったかい梅昆布茶が大好きだったからです」
🟢まさと 「お、おお。そうだ、俺は梅昆布茶が好きなんだよ」
🟠みほ 「それにお暑い外から、急に冷房の聞いた部屋に入ったら体が冷えますでしょ」
🟢まさと 「確かに。今更だけど、あったかいお茶が欲しいよ」
🟠みほ 「それに、アイスコーヒーのお供に出したチーズケーキ」
🟢まさと 「あ、これ。すごくおいしいね」
🟠みほ 「これは、あなたが、いたくお気に入りだったお店のチーズケーキですよ」
🟢まさと 「へ?なんで、お前が。いや、君が」
🟠みほ 「良いですよ。お前で。だってよくワタクシのことお前って呼んでくれてたじゃないですか?ね?特別なご主人様」
🟢まさと 「だめだ、サッパリわかならい。お前は誰なんだ。なんで俺のことを知ってるんだ。ぜんぜん思い出せない」
🟠みほ 「思い出せないのも当たり前ですよ」
🟢まさと 「え?」
🟠みほ 「ワタクシ、猫でしたので」
🟢まさと 「なんのことだ?」
🟠みほ 「みほです」
🟢まさと 「みほ?黒猫の?」
🟠みほ 「はい。あなたをずっとここでお待ちしました」
🟢まさと 「待ってたって。俺がみほを飼ってたのなんてもう10年も前だぞ」
🟠みほ 「あなたは傷心のあまり、川に身をお投げになり、現在も心肺停止」
🟢まさと 「そ、そうなのか」
🟠みほ 「ワタクシが死んだ時に、あなたは私のことを思って泣いてくれた」
🟢まさと 「そりゃ、みほが死んだ時が、人生で一番悲しかったからね」
🟠みほ 「ワタクシ、ずっとここであなたをお待ちしていたんです」
🟢まさと 「そうなのか。ありがとう」
🟠みほ 「嬉しいです」
🟢まさと 「俺は自分で川に身を投げたんだろう。この世に未練はないってことだ」
🟠みほ 「はい。これであなたと」
🟢まさと 「ありがとうな。このプレゼントは、お前にやるよ」
🟠みほ 「シクシク。ごめんなさい。ごめんなさい」
🟢まさと 「ん?なんで謝るんだ?」
🟠みほ 「嘘です」
🟢まさと 「嘘?」
🟠みほ 「本当は、あなたが自分で川に身を投げたんじゃないんです」
🟢まさと 「え?そうなの?」
🟠みほ 「溶けたソフトクリームに足を取られて、すってんころりん」
🟢まさと 「はい?」
🟠みほ 「それで川に落ちたのでございます」
🟢まさと 「じゃ、事故だったのか。なんとゆー恥ずかしい死に方」
🟠みほ 「彼女は、あなたのことを心配して泣いています」
🟢まさと 「え?彼女が!」
🟠みほ 「彼女は怒って帰ったのではありません。服の汚れを取るためにお手洗いに。その間に、すってんころりんと」
🟢まさと 「そうだったのか。ありがとう。本当のことを教えてくれて」
🟠みほ 「みほは、あなたが好きです」
🟢まさと 「うん。俺もだ、みほ」
🟠みほ 「でも、好きだからこそ、あなたを彼女の元の返さなければなりません」
🟢まさと 「そんなこと、できるのか?だって心肺停止って」
🟠みほ 「みほが、ここにずっといたのは、あなたが困った時に助けるためでした」
🟢まさと 「ずっと、ここで待っていてくれたんだね」
🟠みほ 「ちょっと、気持ちが揺らいで、あなたを自分のものにしようとしてしまいました。たかが猫なのに。本当にごめんなさい」
🟢まさと 「みほ。お前をたかが猫だなんて思ったことないよ」
🟠みほ 「私のありったけの力で、あなたを地上に返します。みほは、また何年も待っていますから。簡単にこっちきちゃ、だめですよ」
🟢まさと 「みほ」
🟠みほ 「あなたと話せてよかった」
🟢まさと 「で、さ?」
🟠みほ 「はい?なんでしょうか?」
🟢まさと 「なんでメイド喫茶だったの?」
🟠みほ 「あ、それはあなたが、一人でこっそりいくメイド喫茶が大好きだって、ワタクシに何度も言ってたじゃないですか」
🟢まさと 「こら。それ以上言うな。俺の独り言をバラすんじゃない」
🟠みほ 「それに夜中になったら、よく、お一人でこっそり、女の子の名前を呼んで」
🟢まさと 「わー。わー。もういい。もういい。早く助けてくれ!」
🟠みほ 「はい。じゃあ、次にこちらにいらっしゃる時に続きを」
🟢まさと 「続きなんか良いんだよ」
🟠みほ 「じゃあ、お元気で」
🟢まさと 「ありがとう。そして、また会おうね。みほ」
🟠みほ 「はい」
🟢まさと 「……ん?あれ?」
🟠みほ 「どうかしましたか?」
🟢まさと 「俺、これで生き返ったの?」
🟠みほ 「はい。というか生き返るも何も死んでませんし。このまま扉からどうぞ」
🟢まさと 「へ?扉から出ていく感じなの?」
🟠みほ 「はい、普通に」
🟢まさと 「そうなんだ。ああ、じゃ、行くよ」
🟠みほ 「行ってらっしゃいませご主人様ー」
🟢まさと 「お、おう。じゃ!」
🟢まさと 「えー、と。あ、そういえば、プレゼント。あれ?」
🟢まさと 「あいつ。ふふ。婚姻届だけマジで持っていきやがった」